『私を産んでくれてありがとう。』
なぜか、ふとこんな気持ちになりました。(母は元気にやっていますのでご心配なく。)
ここで森村誠一の小説、【人間の証明】です。
西条八十の「ぼくの帽子」の冒頭の一節が、この映画のキャッチコピーになっていますね。(テーマ曲も、ほとんど「ぼくの帽子」のまんま英語にしてますね。)
母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。
とまれ、
小説に戻ります。
黒人青年ジョニー・ヘイワードは、2歳から生き別れとなってしまった母に会いに、アメリカから日本にやってきます。
「母親に会って、産んでくれた感謝と成長した自分を見て欲しい。」という長年抱いていた純粋な夢を達成するためだけに。
しかし、【人間の証明】というタイトルだけあって、ジョニーの母は、母親でなくなっていました。人間の欲、人間の業のなかで、変わってしまっていたのです。あるいは、人ではなくなっていたのかもしれませんね。
残念ながら、彼の夢は達成こそされますが、悲しい結末に終わります。詳細は映画か、小説を・・・。
さらに、とまれ、
私の母のことです。
どこにでもいる一般的な子供思いの母です。そして仕事では戦友でもあります。
『私を産んでくれてありがとう。』と、なぜか今日はそう思いました。言葉にして伝えたりしませんが。
TOZO 永井敏
私はマザコンではないので、念のため。(笑)
幼い頃、母から買ってもらって気に入っていた帽子を、蔵王の火口湖である「お釜」に、風で飛ばされたことを、ふと思い出したからかもしれません。
明日、予定通りに進んでいない図面の報告をすると、きっと、母からどやされるのでしょうね。(笑)