なかなか公開されない映画「燃えよ剣」。待ち遠しいです。
ただ、気がかりなのは、土方とお雪はどう描かれているのか?
小説「燃えよ剣」(下巻)から引用です。
歳三:『この唇を』
と歳三は、お雪のあごに手をあてて、そっと顔をあげさせた。
歳三:『吸いますよ』
(ばかだなぁ)とお雪は思うのだ。わざわざことわる馬鹿がどこにいるだろう。歳三は、お雪の唇がひどくあまいことを知った。
歳三:『なにを口にいれているのです』
お雪:『いいえ何も』
歳三:『すると、お雪さんの口は自然(じねん)にあまいのですか』
歳三は、むきになって訊いた。暗くて表情がわからないが、少年のような声音を出していた。
司馬遼太郎の男女の表現は、いやらしさがなく、読んでいて清々しい感じがします。
さらに展開は続きます・・・
歳三:『五十年連れ添おうとも、ただの二夜であろうとも、契りの深さにかわりはないとおもいたい。ふた夜のうちには、きっと』
歳三は、言葉をとめた。しばらくだまってから、
歳三:『私は、どうやら恥ずかしいことをいっているようだ。よそう』
といった。
お雪:『いいえ』
こんどは、お雪がかぶりをふった。
お雪:『雪は、たったいまから乱心します』
これを読むと、女性のお雪も土方と変わらず、武士の節義を持ち合わせていると感じます。だから、清々しく感じるのでしょう。
映画ではどのように表現されるのでしょうか?
ぜひ、司馬遼太郎の表現、意図を、忠実に映像化されていることを切望します。
TOZO 永井敏